楽天モバイルは都市部&郊外で弱い~でも他に高速通信を無料で使えるSIMなんてない!
今回は、間もなく無料利用ができなくなる楽天モバイルについてです。楽天モバイルの無料が終了したからといって他に高速通信を無料で利用できるサービスなんて存在しません。

楽天モバイルってなんで通信エリア内なのに都会で使えないの?

前は普通に使えていたのに最近圏外になってしまって困ってる
楽天モバイルは、「都市部」や「郊外エリア」で使えない、圏外になるという口コミが数多くあがっていて、意外に地方では普通に使えているのが不思議…という声を耳にすることがあります。
じつはこれ、理由がわかるとすんなり腑に落ちるので、今回は、その辺りのことを分かりやすくお話ししようと思います。
都市部で弱いのはプラチナバンドを使えないから

通信エリアマップの「赤色」の中にいるのに「繋がらない」と言う声はいまだに大きいですが、楽天モバイルが大都市圏で繋がりにくい理由は実は単純なこと(でも重大なこと)なんです。
携帯やスマホで使うモバイル通信は、様々な周波数の電波を組み合わせて使っていますが、電波は周波数が高くなればなるほど「光」に似てきて高速だけど直進性が強くなる性質を持っています。
逆に、周波数の低い電波は大きく波打ちながら進む性質を持っており、ビルの陰や建物内などへも回り込みやすいので貴重な電波と言う意味で「プラチナバンド」(総務省の研究会ではゴールデンバンド)と言われています。
周波数的には700~900MHz帯の電波ですが、すでにドコモ・au・Softbankに割り当て済みで、後発で事業を開始した楽天モバイルに割り当てられるプラチナバンドは残っていませんでした。
楽天モバイルに割り当てられたのは「1.7GHz(Band3)」というかなり周波数の高い帯域のみであるため、速度は速い反面、建物の裏などに回り込みにくい電波しか使えないのです。
これが楽天モバイルが大都市圏で「繋がらない」と言われる理由です。
高速ビルが建ち並ぶ大都市圏を思い浮かべてください。
回り込みやすいプラチナバンドを使うのと、真っすぐにしか進めない1.7GHz帯の電波を使うのでは、このエリア全体に空白地域なく電波が行き渡るようにするには、どちらが基地局が少なくて済むでしょうか?
当然、直線で全ての面を塗りつぶさなければならない方が、線の描きはじめ=基地局が多くなることは明らかで、楽天モバイルはプラチナバンドを持つ他社より多くの基地局を作らないと同じような「面」としての通信エリアを作ることができないのです。
地下街や地下鉄駅などでも同じで、直線だけで塗りつぶすには相当数の基地局が必用になるわけです。
楽天モバイルは、この状態は不公平だと「プラチナバンドの再割り当て」をかなり強硬に主張していますが、今のところ、再割り当ての見込みはない状態です。
総務省や政府的には、自分たちが楽天モバイルの誕生を後押ししたようなところがあるので、再割り当てをしてもいいと考えている可能性はありますが、今まで3社で分け合ってきたプラチナバンドを、少しずつ削って楽天に与えることを快諾するはずもないので難航しそうです。
郊外エリアで弱いのは人口カバー率が70%を超えたから

こちらは、auが公開している楽天モバイルにローミングで貸し出している通信エリアです。
2022年3月末でもまだこんなにau回線を借りているんですね。
このマップのオレンジ色でない部分が、楽天モバイルまたは通信圏外になるので、東京都心は確実に楽天モバイルの通信網がカバーしていることになります。
ところで、2022年3月末時点の楽天モバイルとauの人口カバー率はご存じでしょうか。
楽天モバイル:97%、au:99.9%です。
『な~んだ、あと2.9%で追いつくじゃん』
なんて、甘いです。
人口カバー率は市町村役場の周辺が通信できるようになっただけ
人口カバー率97%の意味ってわかりますか?
ではありません。
これが正解です。
つまり、市役所や区役所、町役場など、A市にあるすべての役所・役場ので周囲が通信できるようになると、A市全域が使えるようになったと判断します。
楽天モバイルは、役所や役場の周りだけ基地局を立てればその「市」や「区」や「町・村」は通信可能エリアとなって全域を赤く塗りつぶせるのですが、実際には、役所・役場から離れている地域はまだ県外の場所が残っているわけです。
だから、auのローミングマップのようなことが起こるのです。

「人口カバー率」に対して「実人口カバー率」という表記方法もあります。「実人口カバー率」は、500メートル四方の格子状に区分けした地域の一部にでも電波が届けば「圏内」、届かなければ「圏外」と見なし、その地域に住む人と圏内に住む人との比率を算出する方法で、au・Softbankがこの方法を採用しています(ドコモ・楽天は不採用)。
この方法だと、役所・役場の近くだけの数値になりにくく実際のカバー率に近いデータになりますが、auのSoftbankも何割の人に電波が届いたら「圏内」にするのかの基準は公表していません。
人口カバー率が70%を超えた地域はauローミングを終了

ある地域でモバイルの人口カバー率が70%を超えた場合、auローミングを打ち切り楽天モバイル通信網でカバーすることになっています。
つまり、楽天モバイルの人口カバー率が70%になると、auローミングマップのオレンジ色の部分が楽天通信網に切り替わるわけです。
人口カバー率は、楽天70%、au99.9%ですから、単純計算で22.9%の役所・役場周辺で圏外へ逆戻り…ということになるわけです(これは「人口カバー率」と「実人口カバー率」の比較なので実際の通信可能エリアの差はもっと大きい可能性があります)。
しかも、役所・役場の周辺で70%ですから、役所・役場から離れた地域では楽天モバイルがカバーできていない部分はもっと多い可能性もあるので、auローミング時代より「繋がらなくなった」という声があがるわけです。
しかも前項で見た「プラチナバンド」の事も影響していて、auから借りている周波数帯「Band18/26」はauのプラチナバンドなので、直進性の強い1.7GHz帯になれば、いままでプラチナバンドが回り込んでいた場所でも圏外になりやすくなります。
「1GB無料」は廃止だけど3GB=1,078円は十分安い
5/13にプレスリリースとして公開された料金プラン「UN-LIMIT」のアップデートで、楽天モバイルからの乗り換え検討が盛んです。
でも、いろいろな記事やSNSを読んでいると、ただそういう流れに乗っているだけでは?と思うことがあります。
実際、UN-MIMIT Ⅵ~同Ⅶへのアップデートで、ユーザーサイドに悪く作用するのは「1GB以下無料」の廃止だけで、他のプラン内容は変更なしですし、キャリアメール「楽天メール」のサービス開始などプラス要因ばかりです。
その「1GB以下無料」の廃止にしても、実際に毎月のデータ使用量が1GB以下で済んでいた方以外には関係ないはずです。
1GB超~3GBまでのユーザーは、これまで同様、月額1,078円で十分に割安料金です。
例えば、他キャリアの格安通信プラン「Povo」や「LINEMO」でも3GB1,000円が相場で、1,078円と990円では88円/月の差額はありますが、88円だから乗り換えるってどうなんでしょうか。
高速通信を無料で使える通信サービスなんかない!
で、肝心の「1GB以下無料」の代替ですけど、ぶっちゃけ、そんなサービスはありません。
通信サービスは、高速データ通信を売る事業ですので、その高速通信を1GBだけとはいえ無料で提供するなどという楽天モバイルの方が尋常じゃないのです。
楽天モバイルは、1GBを無料で提供することで試して貰って継続的に利用してくれるユーザーを開拓する気持ちもあったでしょうし、実際に無料で使っていても何か月に1回は1GBを超えて使うユーザーも一定数いるので、宣伝費用として考えれば十分採算はとれる…と踏んだんだと思います。
けれど、想像以上に1GB以下無料でしか使わないユーザーが多かったのかもしれませんし、「Rakuten Link」との組み合わせで、「無料通話かけ放題回線の0円運用」なんて使われ方も想定を超えていたのかもしれませんが、いずれにしても、当初の目論見とは違って「1GB以下無料」を継続できなくったのは確かでしょう。
そんな訳で、ちまたでは「1GB以下無料」の代替サービス探しが盛んですが、そんなものないですから。
「Povo2.0」がよく候補に挙がっていますし、実際に乗り換え先第1位だそうです。
でも、楽天モバイルの「1GB以下無料」とは根本的にプランの構成が違います。
楽天モバイルは、無料で高速通信1GBを使わせてくれる前代未聞のサービスでしたが、Povoは基本料こそ無料ですが、高速通信は付帯していません。
Povoで高速通信を使うためには、別途トッピングで容量を購入する必要があるので、「高速通信無料」の楽天モバイルとはまったく違うタイプのプランです。
トッピングを買わなくても128kbpsで通信できるから何とかなる…なんて考えているならこちをどうぞ。


こちらは、Povo2.0の高速時・低速時の同時刻の速度比較です(高速はiPhone、低速はAndroidで同時に計測)。
高速時(トッピング購入)ではまずまずの速度が出ていますが、低速時(トッピングなし)では下り0.04Mbpsしか出ていません。
トッピングなし時は建前上は最大128kbpsとなっていますが、実測では0.04Mbps(=40.96kbps)しか出ておらず、最大速度の約1/3です。正直40kbpsでできることはほとんどありません。
実際に使っている人間から言わせれば、Povo2.0は「楽天モバイル1GB以下無料」の代わりにはならないということです。
他の「基本料無料の乗り換え候補」を見ても、NUROモバイルの「無料」は自宅インターネットとのカップリングが条件ですし、LINEMOの無料はキャンペーンで半年間限定です。
高速通信を無料で使えるサービスなんてない…というところなんですが、1GBを最安で使えるプランならいくつかあります、こちらへ。
https://enjoycamper.info/mobile/rakuten_mobile_mnp/
…にしてもあの言いかたはムカつく気持ちもわかる
だから、1GBの最安プランを探すのでなければ、他社に乗換える必要はないんです。
ないんですけど、やっぱりあの「発言」は受け入れがたいものがあります。
「ずっと0円で使われても困る」
そもそも、自分たちが「採算とれる」と踏んで、「1GB以下無料」を提案したのに、目論見が外れて「1GB以下無料」を続けられなくなったら、「ずっと使われても困る」と言い出す人間がトップの企業ってどんなんだ?って話しです。
「困る」ってなんだよ…です。
自ら「無料でいいので使ってください」と言ったわけでしょ?プランの変更ってそういう意味でしょ?
そんな人は、そのうち、「ずっと使い放題で使われても」とか「無料通話かけ続けられても」なんて言い出しかねないじゃないですか。
「思ったより採算とれず続けられなくなりました」って言った方がここまで反感は買わなかったんじゃないかと思います。言いかた。
冷静に考えれば3GBも割安、使い放題3,278円も破格料金
なんて怒ってないで冷静に考えれば、前述の通り「3GB=1,078円」は十分割安なプラン料金出だし、20GB=2,178円もMVNOなみに安い、20GB超使い放題3,278円なんて破格ともいえる凄い料金設定です。
通信エリアの問題では、プラチナバンドがないだけにコレから先もまだまだ苦労するだろうけど、決して「こんな通信会社ダメだ」というほど悪くない…と思います。
いつ実現するか分からないけど、衛星を使って国土100%エリアを目指す「スペースモバイル」にも期待したい気持ちもあるし。
楽天モバイルって、契約時も解約時もMNP転出やSIM発行/交換などにもいっさい手数料がかからないっていうのも、目立たないけどけっこうお財布に影響するメリットだと思うし。
つまり「1GB以下無料」なのは6月いっぱいと+2か月間(7~8月)、その後は、楽天ポイントの還元による「実質無料」がさらに2か月間、合計6月いっぱい+4か月間は1GB以内になら無料で使えるということです。
考えてみると、契約時の初期費用もかからないし、SIM発行にも、SIMカード⇔eSIMの交換も無料、MNP転出や解約時も手数料がかからない…となると、楽天モバイルがどんなのか確かめる、試してみることができる期間が残り4か月間ってことになるんです。
しかも、その間、eSIMへの交換も、SIMカードに戻すのも無料なので、eSIMを試してみるにも最適ってことです。
気に入ればそのまま使えばいいし、他社へ乗り換えても手数料も違約金もかからないので、気に入らなかければ4か月試して乗換えればいいし…。
「UN-LIMIT」のアップデートをそんな風に捉えてもいいのかな…と思います。
今回は、乗り換え検討が盛んな楽天モバイルについてまとめてみました。
1つは、都市部や郊外で「繋がらない」と言われやすい理由について。
これは後発だけにやむを得ない事情があるのは認めますが、ユーザーサイドからすれば、それでも改善してくれなければ継続的に利用するのは不安が残ります。
2つめは、「1GB無料廃止の代替プラン探し」が盛んですが、実は、高速通信を無料で使えるプランなんてないんだということをまとめました。
そもそも、高速通信を有料で貸し出す事業プランなのに、その高速通信を無料で貸し出していた楽天モバイルの方がある意味尋常ではないプランであって、それに代わる「無料高速通信」などないということでした。
言い方にはムカつきますし受け入れがたいですが、冷静に考えてみると楽天モバイルの条件は悪くないんです。「1GB無料廃止」まで残り4か月余りは、無料で試せるいい機会だと捉えると、今のうちに試しておいた方がよいように思います。
それでは今日はこの辺で。
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